介護事業所を経営されているみなさん、「介護職員の離職率は高くて当たり前」とお考えではないでしょうか?
「従業員がすぐに辞めてしまう」こんなお悩みをお持ちの方もいるのではないでしょうか。
厚生労働省の最新データと、財団法人介護労働安定センターによる統計調査、平成26年度「介護労働実態調査」の結果を参考に、介護労働者の就業実態をまとめてみました。
1.介護職の離職率・採用率を読み解く
まずは介護事業所の1年間の離職状況を見てみましょう。
出典:公益財団法人介護労働安定センター 平成26年度「介護労働実態調査」の結果
1年間(平成25年10月1日~平成26年9月31日)のデータになります。介護業界全体の離職率は16.5%でした。前年に比べ、0.1%改善されています。これは1年間で約6人に1人が退職していることになります。
雇用形態別に見てみましょう。訪問介護員の離職率は、正規職員が約7%上回っています。反対に、介護職員の離職率は、非正規職員が約8%上回っています。
ではここ数年の離職率、採用率はどのように変化しているのでしょうか?訪問介護員、介護職員合計のデータがこちらです。
出典:公益財団法人介護労働安定センター 平成26年度「介護労働実態調査」の結果
離職率は、平成20年度以降は20%を下回り、ここ2年では16%~17%となっています。
7年前(平成19年度)に比べ、約5%下がっています。微量ではありますが、離職率は改善されています。
しかし、介護職の方からよくお聞きするのが「職員が定着しない」という声です。資格があれば転職も容易にできる業界ゆえ、人の入れ替わりが激しくなっています。
では、短期離職する方はどのぐらいいるのでしょうか?正規職員、非正規職員の雇用形態別データはこのようになっています。
出典:公益財団法人介護労働安定センター 平成26年度「介護労働実態調査」の結果
どの雇用形態でも3年未満で離職する人の割合は32~35%と非常に高い数字になっています。3~4人に1人が、入社後3年以内に離職しています。非正規職員の1年未満の離職率は約45%です。4~5人に1人が1年以内に離職しています。
2.介護職の離職率は高い?!他の業種と比べてみよう
介護職の1年間の離職率は16.5%という結果でしたが、これは高いのでしょうか?他の産業の離職率と比較してみましょう。
こちらは平成26年1年間の労働移動者(入職・離職)のデータです。
出典:厚生労働省「平成26年雇用動向調査2.産業別の入職と離職
介護業界が含まれる「医療・福祉」の離職率は15.7%となっています。
産業別で最も離職率が高いのは、「宿泊業・飲食サービス業」の31.4%。ついで「生活関連サービス業・娯楽業」の22.9%となっています。
全体の平均離職率は14.9%です。全体平均に比べ、「医療・福祉」は0.8%上回っていますがほぼ大差はありません。 このデータから、「医療・福祉」の離職率は特別高くないことがわかります。
3.従業員の数は足りている?
介護業界の離職率は全産業の平均と比較し、大差がないことが分かりました。では、介護業界が「人材が不足している」と感じる理由はどこにあるのでしょう?
まずは、介護業界の人材不足に対する意識を見てみましょう。
出典:公益財団法人介護労働安定センター 平成26年度「介護労働実態調査」の結果
従業員数が適当と感じている方が約40%、不足と感じているのが約60%という結果になりました。
また「不足」と答えた方の約6%もの方が「大いに不足」と感じているのです。不足している理由としては以下のようになっています。
離職率ではなく、増え続ける利用者に対して適した数の採用が追いついていないこと、採用した職員が定着せずに短期で離職してしまうことが問題になっているようです。
4.介護業界に人が集まらない理由に迫る!
職員が不足していると感じている約60%のうち、不足している理由として最も多くあげられたのが「採用が困難である」という意見です。
介護業界の採用が難しい理由としては、何があげられるでしょう?
「賃金が低い」が最も高い結果となりました。仕事を選ぶものにとって、「賃金」が判断基準になるのは間違いないようです。
では「低賃金」とされている介護業界のお給料事情はどのようになっているのでしょう?
労働者の所定内賃金【月給の者】は、215,077円(平成26年度)となっています。
※労働者とは、訪問介護員、サービス提供責任者、介護職員、看護職員、介護支援専門員、生活相談員、PT・OT・ST等、管理栄養士・栄養士をいう。ただし、事業所管理者(施設長)を除く。
みなさんはこの金額をどのように考えますか?
5.運営上の問題点は?
離職率が高いわけではないものの、人材不足が嘆かれる介護業界。
そんな現状の今、介護サービスを運営する上ではどのような問題を抱えているのでしょうか?
(複数回答可)
約50%の人が、「良質な人材の確保が難しい」と答えました。採用率は多少向上していても、長く働いてくれる従業員を育てることが難しいと考えられます。
<まとめ>人が集まる、定着する事業所を目指そう
これらのデータから分かるように、他の産業と比較し離職率は特別高いわけではありません。しかし、3年未満の短期離職が多いことから優秀な職員の採用と定着に問題があるようです。
次回は、介護労働者の就業実態と就業意識調査をまとめます。働く人の意識に注目して、問題点を見ていきましょう。
※各グラフは、厚生労働省・公益財団法人介護労働安定センターのデータを元に作成しました。