【ニュース振り返り】心不全の緩和ケア・地域別診療報酬について議論されました!2018年4月のニュース5選

2018年4月に起きた医療介護のニュースをプロアスオフィシャルブログ編集部が振り返ります。その中から特に気になったニュース5選をご紹介します。4月は心不全の緩和ケアや地域別診療報酬など、医療業界に新たな方向性が示されました。そして、大型連休を前に流行中の麻疹(はしか)についても多くのニュースが。そんな4月のニュースを振り返ってみましょう。

心不全患者にも緩和ケアを。厚生労働省の報告書案が明らかに(4/6)

厚生労働省は、日本人の死因の多くを占める心不全の患者に対しても緩和ケアを推進すべきとの報告書案をまとめました。心不全は、日本人の死因の第2位を占める心疾患の中で最も多く、今後も増加傾向にあると予想されています。

心不全は、心臓が体のすべての部分に十分な血液を送るために必要な動きを維持できなくなり、少しずつ悪化していく疾患で、呼吸困難、むくみ、疲労、全身の痛みなどの症状が現れます。厚労省によると、心不全患者の約70%が75歳以上の高齢者であることがわかっていますが、高齢者ではこれらの症状に加えて眠気、錯乱などの症状がみられることがあり、心身ともに大きな苦痛を伴う疾患です。

緩和ケアについては、がんについては先行して推進されていますが、心不全などの循環器系の疾患については体制がまだ整えられていません。今回の報告書では、がんだけでなく心不全についても緩和ケアの対象とし、治療と並行して緩和ケアを行うなどの方針が示されているほか、地域や、医療・介護・福祉など多職種で連携して支える体制を整備する必要があるとまとめられています。

厚生労働省:第3回循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制のあり方に関するワーキンググループ(資料)

地域ごとに診療報酬が決められる「地域別診療報酬」の導入検討進められる(4/19)

厚生労働省は、19日に行われた社会保障審議会の会議で、医療保険制度をめぐる課題について議論を行いました。地域ごとに診療報酬を自由に定めることができる「地域別診療報酬」についても、議題として取り上げられました。地域別診療報酬については、財務省の財政制度等審議会で推進が提言された一方で、厚労省は慎重な考えを示しているほか、日本医師会も地域別診療報酬には反対の姿勢を示しています。

今回の会議では、4つの論点として、(1)予防・健康づくりの推進(医療保険・介護保険における予防・健康づくりの一体的実施)、(2)高額薬剤・医療技術への対応、(3)医療費の動向等に応じて給付率を調整する考え方について、(4)地域別の診療報酬の設定(具体的な活用メニューの提示)が議題に挙げられました。

このうち、(4)地域別の診療報酬の設定(具体的な活用メニューの提示)で取り上げられた「地域別診療報酬」は、都道府県の医療費を適正化する観点から、地域ごとに診療報酬を定めることができるという規定で、高齢者医療確保法第14条に盛り込まれています。しかし、奈良県で活用が検討されているものの、2006年に規定されて以降、現在まで実施例がないのが現状です。

現在、診療報酬は1点につき10円で全国一律に定められていますが、地域別診療報酬を活用することで、1点につき9円など報酬をより低く設定することができ、医療費抑制につながると考えられます。しかし、都道府県ごとに診療報酬が異なる場合、報酬が低い地域の医療機関からの反発があると予想されるなど課題も多く見られ、厚労省は都道府県の意見を丁寧に聞きながら対応していくとの方針を示しています。

厚生労働省:第111回社会保障審議会医療保険部会

財務省:財政制度分科会(平成30年4月11日開催)資料一覧

もうすぐ医師不足が解消される!? 2022年度以降の医学部定員数減少へ(4/12)

厚生労働省は、12日に行われた医師の需給に関する検討会の分科会で、医学部の定員を、2020年度、21年度は現状の水準を維持する一方で、22年度以降減らす方向で検討することを明らかにしました。2008年度以降、継続して行われていた医学部の定員増の方針が見直されることとなります。

この背景には、医師の需要が今後減る予想であることが一因となっています。医師の需要については、高齢化によってしばらく高い状態が続きますが、その後人口減にともなって需要が低くと予想されています。今後の医学部定員を2018年度定員の9,419人と仮定して医師数の推計を行うと、2020年入学の学生が卒業する2028年に34.9万人に到達し、労働時間を週60時間程度(月80時間の時間外労働に相当)に制限した場合ではこのタイミングで医師の需要と供給が釣り合うと考えられます。

今後医師不足が解消されることが期待されていますが、現在検討が進められている医師の働き方改革の動向次第では、医師の需給に影響が現れるかもしれません。

厚生労働省:医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会(第19回)の改訂について

最も長寿な市町村はどこ?平成27年度市区町村別生命表が公表される(4/17)

厚生労働省は、平成27年の市区町村別の平均寿命の調査結果をまとめた「市区町村別生命表」を公表しました。男性で最も長寿だったのは神奈川県横浜市青葉区(83.3年)で、神奈川県川崎市麻生区(83.1年)、東京都世田谷区(82.8 年)がつづいています。女性は、沖縄県中頭郡北中城村(89.0 年)が最も高く、沖縄県中頭郡中城村(88.8 年)、沖縄県名護市(88.8年)となっており、女性は上位3位を全て沖縄県が占めています。

一方、最も平均寿命が短いのは、男女とも大阪府大阪市西成区(男性:73.5 年、女性:84.4 年)でした。また、下位10位のうち、男性の7、女性3市町村が青森県となっており、塩分摂取量の多さなど生活習慣が原因の一つであると考えられます。このように上位、下位のどちらも地域ごとに順位の偏りが見られることから、生活習慣との関連性など、詳しく分析する必要があるかもしれませんね。

※市区町村別生命表:死亡状況を市区町村単位で比較する形式となっており、国勢調査での日本人人口と、人口動態統計での日本における日本人の死亡数、出生数をもとに、平成 12 年から国勢調査が行われるタイミングに合わせて5年に一度作成されています。今回の調査は4回目となります。

厚生労働省:平成27年市区町村別生命表の概況

沖縄で麻疹(はしか)が流行中。ワクチン接種で予防を!(4/19)

沖縄県で麻疹(はしか)が流行しており、厚生労働省が注意を呼び掛けています。沖縄県で4 月 19 日現在、65 例の麻疹患者が発表されているほか、愛知県でも沖縄県に旅行歴のある患者の報告があったことが明らかになっています。

麻疹は、麻疹ウイルスによって発症する感染症で、空気感染、飛沫感染、接触感染など様々な経路でヒトからヒトに感染します。感染力が非常に強く、免疫を持たない人がウイルスに感染した場合、ほぼ100%発症します。今回の流行は、3月に沖縄県内を旅行していた台湾からの旅行者が麻疹に感染しており、旅行中に患者と接触した人に二次感染したことがきっかけとなっています。

麻疹の予防に最も効果的なのはワクチン接種。重症化すると死亡することもあるため、麻疹の罹患歴、ワクチン接種歴を確認し、ワクチン未接種の場合は予防のために接種するようにしましょう。手洗い、マスクで予防することはできません。特に、妊娠中に麻疹に感染した場合、流産や早産を起こす可能性があります。妊娠前にワクチン接種を検討することをおすすめします。

国立感染症:<続報>沖縄県に関連する麻疹患者の発生状況について(平成30年4月19日現在)

厚生労働省:麻しんについて

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