【ニュース解説】診療報酬改定、ついに点数が決定!在宅医療、遠隔診療に注目して解説します

これまでこのブログで何度かご紹介してきた「2018年度診療報酬改定」。2月7日に行われた中央社会保険医療協議会の総会で、ついに個別改定項目と診療報酬点数が明らかになりました。4月から実施される新しい診療報酬制度では「地域包括ケアシステムの構築」が基本方針として示されており、関連する様々な項目が見直されました。そこで今回のブログでは、在宅医療、遠隔診療など、今回の改定で評価されることになったポイントを解説します。

【その1】かかりつけ医 -大病院との役割分担が明確に

今回の診療報酬改定では、可能な限り住み慣れた地域で、自立した日常生活を営むことができるよう、「地域包括ケアシステムの構築」が基本方針のひとつとして示されています。住み慣れた地域で最期を迎えるまで安心して暮らせるよう、医療機関間や介護サービスとの連携を進め、在宅医療や介護を充実させることが求められています。

地域包括ケアに関連した改定の一例をみてみましょう。今回改定では、かかりつけ医機能を持つ医療機関について、評価が見直されました。一般的な外来を受け付けるかかりつけ医が患者からの健康相談を受け、大病院との仲介役を担い、大病院は紹介を中心とした高度な医療を提供する。このような形で役割を明確に分けることが目的とされています。

具体的には、「地域包括診療料・加算」、「認知症地域包括診療料・加算」が、新制度ではそれぞれ2段階の評価となります。地域包括診療においては、評価対象項目として、「訪問診療を提供した患者のうち、当該医療機関での外来診療を経て訪問診療に移行した患者数が10人以上であること」が新設されたほか、医師配置に関する要件が緩和されています。

地域包括診療料地域包括診療料1 1,560点
地域包括診療料2 1,503点

[施設基準]
(地域包括診療料1)
(1) 以下の全てを満たしていること。

ア 診療所の場合
(イ) 時間外対応加算1の届出を行っていること。
(ロ) 常勤換算2名以上の医師が配置されており、うち1名以上が常勤の医師であること。
(ハ) 在宅療養支援診療所であること。

イ 病院の場合
(イ) 地域包括ケア病棟入院料の届出を行っていること。
(ロ) 在宅療養支援病院の届出を行っていること。

(2) 以下の全てを満たしていること。
ア 訪問診療を提供した患者のうち、当該医療機関での外来診療を経て訪問診療に移行した患者数が10人以上であること。
イ 直近1ヶ月に初診、再診、往診又は訪問診療を実施した患者のうち、往診又は訪問診療を実施した患者の割合が70%未満であること。

(略)

(地域包括診療料2)
地域包括診療料1の(1)の要件を満たしていること。
地域包括診療加算
地域包括診療加算1 25点
地域包括診療加算2 18点

(地域包括診療加算1)
(1) 在宅医療の提供及び当該患者に対し 24時間の往診等の体制を確保していること。(在宅療養支援診療所以外の医療機関については、連携医療機関の協力を得て行うものを含む。)

(2) 以下のいずれかを満たしていること。
ア 時間外対応加算1又は2の届出を行っていること。
イ 常勤換算2名以上の医師が配置されており、うち1名以上が常勤の医師であること。
ウ 在宅療養支援診療所であること。

(3) 以下の全てを満たしていること。
ア 訪問診療を提供した患者のうち、当該医療機関での外来診療を経て訪問診療に移行した患者数が、在宅療養支援診療所については10人以上、在宅療養支援診療所以外の診療所について3人以上であること。
イ 直近1ヶ月に初診、再診、往診又は訪問診療を実施した患者のうち、往診又は訪問診療を実施した患者の割合が70%未満であること。

(略)

(地域包括診療加算2)
(1) 在宅医療の提供及び当該患者に対し 24時間の連絡体制を確保していること。

(2) 以下のいずれかを満たしていること。
ア 時間外対応加算1又は2の届出を行っていること。
イ 常勤換算2名以上の医師が配置されており、うち1名以上が常勤の医師であること。
ウ 在宅療養支援診療所であること。

(略)

【その2】在宅医療 -評価が大幅に見直され、新規参入しやすくなる見通し

地域包括ケアに関連して、在宅医療についても評価が見直され、算定項目が新設されました。

例えば、他の医療機関から依頼を受けて訪問診療を行った場合でも、現制度では一つの医療機関のみが加算対象となります。しかし、新制度では依頼を受けた複数の医療機関が評価対象となる、「在宅患者訪問診療料Ⅰ.2」が新設されました。様々な病気を同時に罹患している患者が、専門の他の病院を受診したい場合なども連携しやすくなります。

また、在宅療養支援診療所以外の診療所が、かかりつけの患者に対し、他の医療機関と連携することによって、24時間の往診体制と連絡体制を構築した場合に加算される「継続診療加算」が新設されました。在宅医療を行う場合、医師にとって大きな負担となる24時間の診療体制。これによって、負担が軽減されるとも考えられます。

さらに、「在宅時医学総合管理料(在総管)」、「施設入居時等医学総合管理料(施設総管)」について、全体的に見直されたほか、要介護2以上に相当する患者、認知症高齢者の日常生活自立度でランクⅡb 以上の患者など、通院が特に困難と考えられる患者に訪問介護を行う場合に加算される「包括的支援加算」も新設されます。

在宅患者訪問診療料Ⅰ
2 他の医療機関の依頼を受けて訪問診療を行った場合

同一建物居住者以外 830 点
同一建物居住者 178 点
継続診療加算
216 点(1月につき)

[算定要件]
1.当該保険医療機関の外来又は訪問診療を継続的に受診していた患者であること。
2.算定患者ごとに、当該医療機関単独又は連携する医療機関との協力のもと、24 時間の往診体制及び 24 時間の連絡体制を構築すること。
3.訪問看護が必要な患者については、当該保険医療機関、連携する医療機関又は連携する訪問看護ステーションによる訪問看護を提供していること。
包括的支援加算
150 点(月1回)

[対象患者]
以下のいずれかに該当する患者

1.要介護2以上に相当する患者
2.認知症高齢者の日常生活自立度でランクⅡb 以上の患者
3.月4回以上の訪問看護を受ける患者
4.訪問診療時又は訪問看護時に処置(簡単な処置を除く)を行っている者
5.特定施設等の入居者の場合には、医師の指示を受けて、看護師がたんの吸引、胃ろう・腸ろうの管理等の処置を行っている患者
6.その他、関係機関等との連携のために特に重点的な支援が必要な患者

在宅医療については、これまで診療報酬上での評価があまり十分でなく、高いニーズにもかかわらず、在宅医療を行う診療所はそれほど多くありませんでした。しかし、今回の改定で、在宅医療についての評価が大幅に見直されたため、新規参入が進むと期待されています。

【その3】看取り -老人ホーム、在宅での看取りについての評価が充実

在宅医療に関連する項目として、病院以外での「看取り」についても評価が見直されました。

現在、改定に向けた検討が進められている「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」では、医師等と患者が話し合い、患者自身の意思決定によって終末期医療を進めることが大原則となっています。この原則を踏まえて看取りを行った場合、居住場所によって在宅ターミナルケア加算(在宅患者訪問診療料)」が加算されることとなりますが、今回の改定で加算点数が見直されています。自宅など施設・病院以外の場所と、特別養護老人ホームなどの施設での看取り、それぞれが充実したといえるでしょう。

また、患者や介護職員などが依頼し、緊急時に往診を行った場合に加算される「往診料 緊急時往診加算」では、「医学的に終末期であると考えられる患者」が対象者として追加されました。

在宅ターミナルケア加算(在宅患者訪問診療料)
(有料老人ホーム等以外に居住する 患者)

イ 機能強化型在宅療養支援診療所 又は在宅療養支援病院
(1) 病床を有する場合 6,500点
(2) 病床を有しない場合 5,500点
ロ 在宅療養支援診療所又は在宅療養支援病院 4,500点
ハ その他の医療機関 3,500点

(有料老人ホーム等に居住する患者)

イ 機能強化型在宅療養支援診療所 又は在宅療養支援病院
(1) 病床を有する場合 6,500点
(2) 病床を有しない場合 5,500点
ロ 在宅療養支援診療所又は在宅療 養支援病院 4,500点
ハ その他の医療機関 3,500点
往診料 緊急時往診加算
[算定要件]
緊急往診加算の対象となる緊急な場合とは、患者又は現にその看護に当たっている者からの訴えにより、速やかに往診しなければならないと判断した場合をいい、具体的には、急性心筋梗塞、脳血管障害若しくは急性腹症等が予想される患者又は医学的に終末期であると考えられる患者(当該保険医療機関又は当該保険医療機関と連携する保険医療機関が訪問診療を提供している患者に限る。)をいう。

【その4】遠隔診療 -算定項目が新設!報酬としてきちんと評価される仕組みに

情報通信機器を活用した遠隔診療についても、診療報酬上の評価が新設されました。対面診療の原則の上で、一定の要件を満たせば算定されることとなります。

今回新設された「オンライン診療料」 は、特定疾患療養管理料、生活習慣病管理料、在宅時医学総合管理料、精神科在宅患者支援管理料などを算定している患者で、初診から6か月以上経過したのち、オンライン診察を行った場合に算定できます。そのほかに、生活習慣病管理料など特定の報酬が算定される患者に、療養計画に基づき対面診療とオンライン診療を組み合わせた管理を行った場合に算定される「オンライン医学管理料」など、複数の算定項目が新設されました。

また、在宅医療と関連する項目として、「在宅時医学総合管理料 オンライン在宅管理料」が新設されました。在宅医療を受けている患者で通院が難しい場合、訪問診療を1回行ったのち、情報通信機器を用いた医学管理を行うと、在宅時医学総合管理料に加えて算定されます。

オンライン診療料
70 点(1月につき)

[算定要件]
(1)別に定めるオンライン診療料が算定可能な初診以外の患者で、かつ、当該管理に係る初診から6月以上を経過した患者(初診から6月の間は毎月同一の医師により対面診療を行っている場合に限る。)に対して、オンラインによる診察を行った場合に算定できる。ただし、連続する3月は算定できない。

(略)

[オンライン診療料が算定可能な患者]
特定疾患療養管理料、小児科療養指導料、てんかん指導料、難病外来指導 管理料、糖尿病透析予防指導管理料、地域包括診療料、認知症地域包括診療 料、生活習慣病管理料、在宅時医学総合管理料又は精神科在宅患者支援管理 料を算定している初診以外の患者で、かつ、当該管理に係る初診から6月以 上を経過した患者

[施設基準]

(略)
オンライン医学管理料
100 点(1月につき)

(1)特定疾患療養管理料、小児科療養指導料、てんかん指導料、難病外来指導管理料、糖尿病透析予防指導管理料、地域包括診療料、認知症地域包括診療料又は生活習慣病管理料を算定すべき医学管理を継続的に行っている患者に対して、療養計画に基づき対面診療とオンライン診療を組み合わせた管理を行った場合に、前回受診月の翌月から今回受診月の前月までの期間が2月の場合に限り、所定の管理料に合わせて算定できる。(ただし、対面診療で特定疾患療養管理料等を算定する月においては、オンライン医学管理料は算定できない。)

(略)
在宅時医学総合管理料
オンライン在宅管理料
100 点(1月につき)

[算定要件]
(1)在宅での療養を行っている患者(施設入居者等を除く)であって通院困難なものに対して、当該患者の同意を得て、計画的な医学管理の下に定期的な訪問診療を1回のみ行い、かつ、当該月において訪問診療を行った日以外に情報通信機器を用いた医学管理を行った場合に、在宅時医学総合管理料の所定点数に加えて算定する。ただし、連続する3月は算定できない。

(略)

現行制度では、遠隔診療について算定項目が設けられておらず、対面診療と同じ内容の診察を行った場合でも対面診療より点数が低くなってしまいます。これが、遠隔診療が解禁された今でも、普及の足かせになっていますが、今回の大幅見直しにより状況も変化するかもしれません。

厚生労働省:中央社会保険医療協議会 総会(第389回) 議事次第

まとめ

2月7日に明らかになった診療報酬改定の個別改定項目と診療報酬点数。団塊の世代が75歳になる2025年を迎える前に、最後の診療報酬・介護報酬の同時改定となることから、現在の医療・介護制度そのものが見直された改定となりました。これまで普及がそれほど進んでいなかった在宅医療、遠隔診療などが、この改定を受けてどのように変化するのか。要注目です。

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