【ニュース解説】遠隔診療の新指針「オンライン診療の適切な実施に関する指針」のポイントを解説します!

2015年8月に解禁された遠隔診療。遠隔診療に関する診療報酬も改定され、今後普及が進むと予想されます。そんな中、昨年から検討が進められていた、遠隔診療についての初めての指針「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が、3月30日に厚生労働省から発出されました。今回のブログでは、この指針のポイントを解説していきます。

【用語解説】そもそも遠隔診療とは?定義をご紹介します

まずは用語の定義をご紹介します。これまで遠隔診療、オンライン診療など様々な用語が使用されてきましたが、明確な定義は明らかにされていませんでした。これらの用語について、今回の指針ではじめて定義され、位置づけも明言されました。早速みていきましょう。

遠隔医療

情報通信機器を活用した健康増進、医療に関する行為。

オンライン診療

遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為。

オンライン受診勧奨

遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して患者の診察を行い、医療機関への受診勧奨をリアルタイムにより行う行為であり、患者からの症状の訴えや、問診などの心身の状態の情報収集に基づき、疑われる疾患等を判断して、受診すべき適切な診療科を選択するなど、患者個人の心身の状態に応じた必要な最低限の医学的判断を伴う受診勧奨。具体的な疾患名を挙げて、これにより患している旨を伝達すること、一般用医薬品の具体的な使用を指示すること、処方等を行うことなどはオンライン診療に分類されるため、これらの行為はオンライン受診勧奨により行ってはならない。

遠隔健康医療相談

遠隔医療のうち、医師又は医師以外の者-相談者間において、情報通信機器を活用して得られた情報のやりとりを行うが、一般的な医学的な情報の提供や、一般的な受診勧奨に留まり、相談者の個別的な状態を踏まえた疾患のり患可能性の提示・診断等の医学的判断を伴わない行為。

診断

一般的に、「診察、検査等により得られた患者の様々な情報を、確立された医学的法則に当てはめ、患者の病状などについて判断する行為」であり、疾患の名称、原因、現在の病状、今後の病状の予測、治療方針等について、主体的に判断を行い、これを伝達する行為は診断とされ、医行為となる。

「遠隔医療」というカテゴリの中で、それぞれがどのように位置づけられているかまとめると、次の図のような形になります。

「遠隔医療」という大きなカテゴリの中に、「オンライン診療」、「オンライン受診勧奨」、「遠隔健康医療相談」のいずれも含まれていますが、今回の指針の対象となるのは、診断などの医学的判断を行う「オンライン診療」、「オンライン受診勧奨」のみとなります。「遠隔健康医療相談」についてはあくまで情報提供であり、診断とみなされないことから、今回は対象外となります。

【指針のポイント①】オンライン診療を行う際には、患者の合意が必要

それでは、オンライン診療を行う際のポイントをご説明しましょう。

まずは、オンライン診療を実施する旨について、医師と患者との間で合意が必要となります。

オンライン診療のメリットだけでなく、デメリットについても情報提供を十分に行った上で、患者の合意を得ることを徹底することが求められています。また、オンライン診療を行う、という点だけでなく、オンライン診療を行う際の具体的なルールをまとめた「診療計画」についても患者に合意してもらう必要があります。

診療計画については、まずは直接の対面診療を行い、その評価に基づいて次の事項を盛り込んだ計画を作成する必要があります。

診療計画に必要な事項

  • オンライン診療で行う具体的な診療内容(疾病名、治療内容等)
  • オンライン診療と直接の対面診療、検査の組み合わせに関する事項(頻度やタイミング等)
  • 診療時間に関する事項(予約制等)
  • オンライン診療の方法(使用する情報通信機器等)
  • オンライン診療を行わないと判断する条件と、条件に該当した場合に直接の対面診療に切り替える旨(情報通信環境の障害等によりオンライン診療を行うことができなくなる場合を含む。)
  • 触診等ができないこと等により得られる情報が限られることを踏まえ、患者が診察に対し積極的に協力する必要がある旨
  • 急病急変時の対応方針(自らが対応できない疾患等の場合は、対応できる医療機関の明示)
  • 複数の医師がオンライン診療を実施する予定がある場合は、その医師の氏名及びどのような場合にどの医師がオンライン診療を行うかの明示
  • 情報漏洩等のリスクを踏まえて、セキュリティリスクに関する責任の範囲及びそのとぎれがないこと等の明示

【指針のポイント②】「まずは対面診療」が原則

つづいて、オンライン診療を行う際には、まず直接の対面診療を行う必要があります。

オンライン診療は通院の手間がなくなるというメリットから、特に生活習慣病などの慢性疾患での診療に活用できると考えられています。しかし、オンライン診療では、得られる情報が視覚・聴覚のみとなり、触覚や嗅覚での判断ができなくなることから、対面診察と比較して、診察で得られる情報が少なくなると考えられます。この背景を踏まえて、疾病の見落としや誤診を防ぐために、初診は「対面」が原則であることが明言されました。オンライン診療を開始した後でも、オンライン診療が不適切と判断される場合については対面による診療に変更する必要があります。

また、初診以外にも対面診療が原則であると明示された事例がいくつかあります。

原則、対面診療が必要な事例

  • 初診
  • 急病・急変患者の診察
  • 新たな疾患に対して医薬品の処方を行う場合

医薬品の処方については、オンライン診療を行った上で実施することについては問題ないとされていますが、副作用のリスクについてきちんと判断するために、新しい疾患に対して医薬品を処方する場合については、まずは対面診断を行うことが原則とされています。

そのほかに、医薬品の転売や不適正使用を防ぐために、向精神薬、睡眠薬、医学的な必要性に基づかない体重減少目的に使用されうる利尿薬や糖尿病治療薬、美容目的に使用されうる保湿クリームなどの特定の医薬品を、オンライン診療のみで処方することはできないとされています。

このように、原則は対面診療を行うことが指針で明示されていますが、対面診療を行わずにオンライン診療のみで診療を行うことができる例外として「禁煙外来」が挙げられています。定期的な健康診断が行われていることを医師が確認することを条件に、オンライン診療でのみ診察を行うことが可能となっています。

この例外事項については2017年7月に発出された通知で既に明らかになっていましたが、今回の指針にも改めて盛り込まれた形になります。

平成29年7月14日付厚生労働省医政局長発0714第4号

【指針のポイント③】診察方法&オンライン診療を行う場所・体制についてのルール

実際にオンライン診療を行う場合の方法や、場所についてのルールはあるのでしょうか。

まず、診察方法については、リアルタイムで視覚・聴覚の情報を得られる情報通信手段で行うよう指定されています。画像や文字、写真、録画動画についても、補助的な手段として利用することはできますが、これらのやり取りのみで完結してはならないと明言されています。

また、同時に複数の患者の診察を行うことはできず、一対一での診察を行うことが必要であるほか、診察の際には、医師は医師であることを、患者は患者本人であることを、医師免許や本人確認書類などで示す必要があります。

つづいて、診察を行う場所と診察の体制について、次のように示されています。

医師

  • 必ずしも医療機関において行う必要はない
  • 騒音のある状況や、ネットワークが不安定であり動画が途切れるなど、情報を得るのに不適切な場所では行わない
  • 患者の情報を保護するために、公衆の場でのオンライン診療は不可
  • 患者の急病急変時に適切に対応するため、患者が速やかにアクセスできる医療機関において直接の対面診療を行える体制を整えておくこと
  • オンライン診療を行う際は、診療録等、過去の患者の状態を把握しながら診療すること等により、医療機関に居る場合と同等程度に患者の心身の状態に関する情報を得られる体制を整えなければならない

患者

  • 患者の居宅等で受診する必要がある

※居宅等:老人福祉法に規定する養護老人ホーム等のほか、医療を受ける者が療養生活を営むことができる場所

  • 患者の勤務する職場等についても、療養生活を営むことのできる場所として認められる

医師については、必ずしも医療機関で行う必要はありませんが、患者の心身についての情報を保護するために、公衆の場で行うことはできません。患者については、自宅や老人ホームなどのほか、職場でも受診することができます。

厚生労働省:「情報通信機器を用いた診療に関するガイドライン作成検討会 オンライン診療の適切な実施に関する指針」を取りまとめました

まとめ

ついにまとめられた「オンライン診療の適切な実施に関する指針」。用語の定義から、実施においての原則や具体的な注意点、今回はご紹介できなかった情報セキュリティについての事項など、とても幅広い内容が盛り込まれています。オンライン診療をすでに実施されている方も、まだこれから!という方も、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」をこのブログと一緒にお読みいただければ幸いです。

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