【ニュース振り返り】オンライン診療ガイドライン案が明らかに!人生の最終段階における医療・ケア&高齢者の医薬品適正使用ガイドラインにも大きな動きが。2018年3月のニュース5選

2018年3月に起きた医療介護のニュースをプロアスオフィシャルブログ編集部が振り返ります。その中から特に気になったニュース5選をご紹介します。年度末である3月度は、オンライン診療や人生の最終段階における医療・ケア、高齢者の医薬品適正使用など、様々なガイドラインに大きな動きがみられました。そんな3月のニュースを振り返ってみましょう。

オンライン診療のガイドライン案が提示される(3/9)

厚生労働省は、9日に「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の案を示しました。

内容について少しご紹介しましょう。まず「遠隔診療」、「オンライン診療」など、これまで明確の定義がないまま使用されてきた呼称が定義されました。「情報通信機器を活用した健康増進、医療に関する行為」を「遠隔診療」、「遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果を伝達する等の診療行為を、リアルタイムで行う行為」を「オンライン診療」と定義しています。

また「最低限遵守する事項」として、初診、新たな医薬品の処方を行う場合は直接の対面による診療を行うこと、オンライン診療を実施する際は、医師と患者との間で合意を行うことが原則であることが示されたほか、医師のなりすましを防ぐため、医師免許証などで患者に対して本人確認を行うことが求められています。そのほかに、「望ましい例」、「不適切な例」など運用にあたっての注意点が具体的に示されました。そして、情報漏えいなどを防ぐために行うべき、情報セキュリティ対策についても指針内で示されています。

「オンライン診療の適切な実施に関する指針」は3月中に内容が確定し、4月から全国での運用が開始される予定です。

厚生労働省:第2回情報通信機器を用いた診療に関するガイドライン作成検討会

 

終末期医療の指針、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」改定版が公表(3/14)

厚生労働省は14日に、終末期の医療についての指針「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の改定版を公表しました。

今回公表されたこのガイドラインは、2007年に制定された「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」の改定版となります。ガイドラインの名称が、患者本人の意思を最後まで尊重するという意図から、「終末期」ではなく「人生の最終段階」という言葉に変更されたほか、自宅や介護施設など、病院以外での看取りが今後増えることが予想されることから、病院以外の現場で活用できるよう変更されています。また、介護職員についても医療チームの一員となることが明示されました。

そして、患者の意思は治療の過程で変化していくものであるため、医療・ケアチームとの話し合いを繰り返し行うこと、また本人との意思疎通が難しくなった場合に、本人の意思を推定しうる家族等の信頼できる者も含めて、事前に繰り返し話し合いを行うことが重要であることが明示されました。

厚労省が昨年12月に医師4,500人に対して行った調査では、今後の医療・療養について患者・家族等と医療従事者があらかじめ話し合う自発的なプロセス「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」を実施していると回答したのは27.3%にとどまり、7割の医師が実施していないことがわかっています。今回の指針改定により、この状況も変化するかもしれません。

厚生労働省:「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」の改訂について

厚生労働省:第5回 人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会

 

高齢者の多剤服薬による副作用を防ぐ、新ガイドラインの大筋が決まる(3/9)

厚生労働省は、9日の高齢者医薬品適正使用検討会で、高齢者が複数の薬を摂取することで副作用が起こる「ポリファーマシー」を防ぎ、高齢者の薬物療法を適正化するためのガイドライン「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」の大筋を確定させました。3月からパブコメ(*)募集を行い、4月以降に最終決定する予定です。

厚労省の調査で、75歳以上の高齢者の約1/4が7種類以上、4割が5種類以上の薬剤を処方されていることが明らかになっていますが、多くの薬を併用すると薬同士の相互作用が起き、副作用が発生しやすくなることが問題視されていました。今回のガイドラインは、多剤服用の中でも害をなす「ポリファーマシー」を防ぐために、ふらつき・転倒、記憶障害など、副作用と疑われる症状が現れた場合には、処方の中止・減量を行うことが求められています。また、病院から処方された薬だけでなく、一般用医薬品や健康食品(サプリメント)についても医療機関が服用状況を把握するよう、方針が示されています。

「高齢者の医薬品適正使用の指針」については、今回大筋が決定した総論編に加えて、詳細編として「疾患領域別もしくは療養環境別の指針」が2019年度に作成される予定となっています。

(*)パブコメ:
パブリックコメント。国の行政機関が政令や省令等を定めようとする際に、事前に原案を公表し、広く一般から意見を募り、その意見を考慮して決定する制度のこと。行政運営の公正さの確保と透明性の向上を図り、国民の権利利益の保護に役立てることを目的としています。

厚生労働省:第6回 高齢者医薬品適正使用検討会 資料

 

オプシーボは24%値下げ、薬価改定が告示される(3/5)

厚生労働省は、4月から適用される薬価を告示しました。薬価については2年に一度改定が行われており、前回改定と比較し7.48%のマイナスとなりました。今回の改定では、新薬創出等加算の対象成分が絞り込まれたほか、長期収載品の薬価を段階的に下げる新制度が導入されたことによって、大幅な削減となりました。

今回特に注目された、がん治療薬「オプジーボ」については約24%の大幅な値下げが行われました。「費用対効果評価」や、承認当初の効能に加え、肺がんへの効能を追加したときに行った用法・用量の変更に併せた「用法用量変化再算定」など、複数の項目で見直された結果の薬価下げとなります。

薬価改定については、現在2年に一度行われていますが、2021年度からは毎年実施することが決定しています。医療費削減につながる一方で、新薬開発が難しくなるため製薬企業への影響が懸念されています。

厚生労働省:薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について(平成30年4月1日適用)

 

健康寿命&平均寿命、どちらも増加!健康寿命の調査結果が公表される(3/9)

厚生労働省は、2016年の健康寿命についての調査結果を公表しました。推計値は男性が72.14歳、女性は74.79歳となり、2010年調査と比較すると男性で 1.72 年、女性で 1.17 年伸びていることがわかりました。また、都道府県別の結果も公表されており、最長は男性が山梨県で73.21歳、女性は愛知県で76.32歳でした。

さて、健康寿命についてご紹介しましたが、平均寿命はどのように変化しているのでしょうか。平均寿命についても、2010年から2016年の間で、男性で 1.43 年(79.55 年→80.98 年)、女性は0.84 年(86.30 年→87.14 年)増加しています。

健康寿命は、人の寿命において「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」を指すのに対し、平均寿命は、寝たきり状態など「日常生活が制限される期間」も含む指標となります。平均寿命と健康寿命を比較すると、現時点ではあまり差が縮まっていませんが、健康寿命の増加幅の方が少し上回っていることから、今後状況が改善されるかもしれません。医療費削減につながる、注目の指標となります。

厚生労働省:第11回健康日本21(第二次)推進専門委員会 資料

プロアスへのお問合せはこちらから

プロアスでは、多数のICTツールや業務効率化システム・サービスなど、病院・クリニック・介護施設の経営のお役に立つラインナップを揃えております。まずは気軽なご相談からご連絡ください。