保険改定における診療点数の見直しや、消費税増税等医療・介護を取り巻く状況が厳しさを増す中、環境対策などを通じ、コスト削減は重要なテーマとなっているのではないでしょうか。 そんな中、事務長様からこんなお声をいただくことがありました。
「今、コスト削減の取り組みは最重要項目のひとつとなっている。いろんな企業が提案に来るが、正直どれがいいのかわからない…他施設はどういう取り組みをしているのか教えて欲しい。 」
そこで編集部では、事務長様やご担当者様に直接お電話でお話をお伺いし、現状の院内における光熱費のコスト削減に関する取り組みで考えるべき所はなんですか?と質問を投げかけてみました。 今回はその中から実際に採用され、効果があったと回答して頂いた上位2つをご紹介させて頂きます。
病院経営に役立つコスト削減①地下水利用
施設内の敷地を掘って地下水を利用するというもので、実際は、施工業者側が設備費用を負担し、最終的な水を供給してもらう仕組みです。上水道を単価の安い地下水に切り替えることにより、初期投資なく上水道料金の削減が図れます。
例えば、年間の上水道使用料が30,000㎥の場合、約240万円(年額)お得になったという報告があります。水道料金の削減だけでなく、「災害時の断水の際の地域の拠点として機能を果たしたい」という想いから採用される施設も多いようです。
聞くところによりますと、関西よりも関東の方が東日本大震災の影響からかこの地下水の利用を検討されている施設が多くいらっしゃるそうです。ただ、水源や環境により地域的に採掘できない場所もあるようですので注意が必要です。
病院経営に役立つコスト削減②照明のLED化
言わずとも知れた、コスト削減の定番アイテム!ただ数年前まではLED化するに当たり、蛍光灯とLEDの価格の差が大きく、なかなか予算化しにくい。という声が多くありました。また、初期投資してLED化したとしても費用対効果が現れる時期が「導入後10年」。いくら補助金が付いたとは言え、全ての施設がこぞってLED化したとは考えにくいものがありました。
しかし、現在は2年半~4年程度で投資が回収できるようになってきました。これにより、従来「建替えの時に検討するよ…」「うちはまだ早いかな…」とお考えだった皆様がLED化に着手されています。
例えば、LEDにすることで年間の電気代は約70%削減できます。(下記図・グラフは弊社で185床の病院様でLEDに切替えた場合の試算値を出したものです。
※病院全体ではなく、受付・病室等部分的にLEDに交換することを想定)
ある医療機関様では、LEDをただ単純に入れ替えるだけではなく、
・外来の待合空間
・健康診断などで通る患者様の移動通路
そして患者様とのコミュニケーションの場である
・カウンセリングルーム
・談話室
これらに関して、現状の照明設備を根本から見直し、照明色彩や明暗制御、間接照明の導入など患者様のゆとりの空間を現場で調査して最善な空間を作り上げたそうです。
そのうえ、しっかりコスト回収も行い、いわば「儲けて院内の改善をする」 というケースも出てきています。ただ単に照明器具をLEDに変える。という時代はもう終わっています。
病院経営に役立つコスト削減③病院スタッフの日頃の取り組み
ここからは番外編として、スタッフの方が実践されている“今すぐ取り組める工夫”をご紹介させて頂きます。
・節水・節電の貼り紙
・職員はエレベーターを使わない!
・職員更衣室の電気を間引く
・事務所のエアコンをOFF
・トイレなどの手拭ペーパータオルを吸収率のいいものに変更
・トイレットペーパーはシングルを利用
・トイレに音姫設置
…等
皆様、工夫して取り組まれているようです。音姫なんて、面白いアイデアですね。日本人特有ですが、女性は恥ずかしさから水流しちゃいますよね。
※音姫とは、自動又は手動で流水音が流れ、プライバシーを守る消音効果と、水のムダ使いをカットする節水効果を同時に実現してくれるトイレ用擬音装置です。
(TOTO株式会社 http://www.toto.co.jp/products/public/toilet_related/ )
今回のアンケートで、皆様コスト削減の意識をかなり高くお持ちであることがわかりました。しかしながら、「やろうとは思っているが、なかなかタイミングがね…」と仰られる事務長・御担当者様がいらっしゃるのもまた事実です。
ご紹介した対策以外にもエアコンの吹き出し口にプロペラを付けて冷気を循環させる装置や窓に特殊なフィルムを貼って熱線である赤外線をさえぎる遮熱フィルムの利用をされている病院もありました。
身近なものから取り組める工夫はたくさんあります。今回の記事が「もう一度見直してみよう」と思っていただけるとひとつのきっかけになれば幸いです。