【病院経営を圧迫する未収金問題】未収金回収の3つのポイント

病院経営に於いて、医療費の未払いによる“未収金の回収”は大きな問題となっています。

その理由として挙げられるのは、不況による低所得世帯の増加で止む無く未払いになるケースや、患者側の権利意識が向上し診療内容に対する不満による支払い拒否、最初から支払う意思のない「悪質滞納者」モンスターペイシェントの増加等あり、病院担当者様は未収金の管理・回収に大変苦労をされているのではないでしょうか?

医療機関における未収金は、四病院団体協議会(全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会・日本病院会)等の加盟病院(約5,500病院)の総計だけでも年額370億円発生しているといわれています。(H17年四病院団体協議会調査結果)

未収金問題の要因

以前編集部が近畿圏の病院120施設へ独自のアンケートを実施した結果、未収金となるには下記要因が挙げられることが分かりました。

・会計時の現金不足による不払い      18%
・死亡退院による債権者不明・身寄り無し  18%
・はじめから払う気が無い         14%

中には少数意見ですが

・待ち時間が長いことによる帰宅      3%
・治療内容の不満による不払い       2%

という回答もありました。

また、病院からは未収金の回収についてこんなお困りの声を多くいただきました。

・督促等をルール化、マニュアル化して管理しているが、管理資料の作成や、報告用の資料作成など手間がかかっている。
・未収金の管理が担当者に依存しており、担当者が休むと対応できない。
・法的なノウハウが医事課には無いため、長期化した未収への対策がとれない。
・弁護士との回収不能リストや回収状況のやりとりが大変。

みなさん、未収金の管理・回収には大変苦労されているようです。
そこで今回は未収金の増加を防ぐための、3つのポイントについてご紹介いたします。

未収金回収のポイント①「防ぐ」

まず第一に【防ぐ】ですが、未収金を発生させない組織づくりが重要となります。
「いかに発生を防止するか」スタッフの意識改革が必要となります。

具体的には受診時の保険証確認や時間外診療に対する預り金、患者本人以外の連絡確認などを窓口で確実に行う事が大切となります。

また、診療・治療内容の不満による不払い者への対策としては、予め、一部負担金が特に高額となる検査項目や手術に関して一覧表を作成し、これを患者に手渡して説明することも有効となります。

 

未収金回収のポイント②「見つける・連携する」

次に【見つける・連携する】では、未払い患者の確認を定期的に行い、支払いが滞っている患者や、滞納を何度も繰り返す患者を抽出し、院内で医事課職員だけでなく医師や薬剤師、看護師と情報を共有することが重要となります。

医師・薬剤師には診察時や服薬指導の際に気をつけてもらい、未払いが発生しそうな患者については、医事担当者やMSWに連絡し、早期に関与するなど、各部署と連携した対策が必要となります。

 

未収金回収のポイント③「回収・管理する」

最後に【回収・管理する】では、支払い期日までに入金が確認できない患者について個々の事情に関わらず全員をリストアップし、電話連絡や面談を行い、状況を把握する事が重要となります。

経済的な事情などにより支払いが困難な場合は、MSW(医療ソーシャルワーカー)が介入し、決められた未収金の対策ルールは適用せず、支払い相談に応じることも必要でしょう。

特に入院患者の退院時点での未収金については、退院時の未収金回収の手順についての書類等の確認も必須となります。

 

未収金を発生させないための工夫と対策

次に、アンケートにお答えいただいた医療機関様で実際に『未収金対策で効果があった』取り組みをご紹介させていただきます。

□ 土・日は窓口がないため警備や当直の方に委託して預り金として処理。診療内容によって5千円預かり、1万円預かりという形を採用している。

□ 保険の期限切れの場合は、本人と改めて連絡がとれないと再請求できない為、保証人を記載してもらう事で回避している。

□ 休日退院には支払い確約書の提出を義務付けることで回収率UP。

□ 定期請求や退院請求前に概算金額を伝えることで未収発生が減少。

□ 長期入院者の状況を調査して、生保や障害者申請を促し患者の自己負担そのものを減少。

□ カード支払が可能な機器を導入し、入院の未収発生が減少。

 

未収金が発生した場合の督促の運用

最後に、発生してしまった未収金の督促についても伺っておりますので各病院の取り組みをご紹介いたします。

□ 支払えない入院患者様の対応として、支払相談窓口担当を設置し、患者様と書類<を交わすようにしている。

□ 病院名で職員が督促状を未収金発生後3ヵ月、6ヶ月スパン等、定期的な運用として定め、実施している。

□ 支払が滞った場合、法的手段を取らざるを得ない旨の意思表示しながら督促活動を行っている。

□ 1名に任せるのではなく、2名体制で電話督促+訪問督促を実施し、ストレスの軽減や相互に対策を練りながら実施している。

□ 院内で請求督促や電話督促をマニュアル化しており、マニュアル通りに実施しても支払わない場合は、職員の範疇から外し、司法書士にお願いしている。(2~3割程度の報酬)

 

<まとめ> 未収金はいかに回収するかではなく、発生させない取組が必要

発生した未収金を回収するには、医療機関にとって時間や経済的コストも伴います。一番重要なのは、これを発生させないことです。
今回ご紹介した「未収金を発生させないための工夫と対策」はアンケートにご協力いただいた病院様が実際に効果があったと回答されたものです。是非、まだ取り組まれていない対策がありましたら参考にしてください。

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