介護事業者がストレスチェックを積極的に取り組まなければいけない理由|ストレスチェック義務化のその後

2015年12月、労働者の心の状態を年に1回調べる「ストレスチェック制度」が義務化されました。その当時はマイナンバー制度導入とともに話題になりましたが、現在の導入実態はどうなっているでしょうか?医療機関や介護事業者にとっては、非常に大事な取り組みですので改めて解説いたします。

ストレスチェック義務化とは?

2014年6月19日に労働安全衛生法の一部を改正する法律案が可決・成立しました。これにより、従業員50人以上の事業所に対し全従業員へのストレスチェックの実施等のメンタルヘルス対策が義務付けられました。(従業員50人以下の事業所は努力義務)

ストレスチェックは「心の健康診断」であり、メンタルヘルス不調者の早期発見・早期治療、またはメンタルヘルス不調になりにくい職場環境作りを促進し、うつなどを予防することを目的としています。

 

特に介護事業者はストレスチェックに積極的に取り組むべき!

厚生労働省によると、自殺やうつによる経済的損失は、2009年で約2.7兆円。2014年の自殺者は2万5427人で、うち2227人が勤務問題を苦に命を絶っています。

離職率の高さや人材不足が嘆かれる介護業界はどうなっているのでしょう?仕事のストレスが原因でうつ病などの精神疾患を発症したとして、労災を申請した介護職員が2014年までの5年間で2倍以上に増えたことが明らかになっています。
認定された人も3倍に増加し、慢性的に人手不足が続く介護業界の深刻な職場環境の悪化が浮き彫りになっています。

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介護業界(「社会保険・社会福祉・介護事業」)における精神疾患の労災申請は、2009年度の66人は2014年度には140人に増加しています。5年のうちに約2倍の数に増え、業種別でトップになっています。

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精神疾患の労災認定は2009年度の10人から2014年度には32人に増加し、5年のうちに約3倍に増えています。業種別では「道路貨物運送業」の41人に次ぐ2位になっています。

うつ病などの精神疾患の労災は、認定基準に基づいて仕事の負荷との因果関係を判断しています。長時間の残業や仕事内容・量の大きな変化、休日のない長期の連続勤務、パワハラやセクハラなどがあった場合にストレスの程度を評価し、強いストレスがあれば認定されることになっています。

ストレスチェックだけでメンタルヘルス問題を解決できるわけではありません。また義務化されているストレスチェック制度ですが、ストレスチェックを怠ったからといって直接罰則が課されることはありません。しかし、ストレスチェックを行っていない職場で労働者が精神疾患を患った場合は「安全配慮義務違反」は成立する可能性があります。

労働契約法第5条に記載されている「安全配慮義務」が適用され多額の賠償金を支払うことになってしまった事例もあります。

 

ストレスチェックの実施手順を再確認

では、ストレスチェックを実施するにはどのようにすれば良いのでしょうか?ストレスチェック制度の実施手順はこのようになっています。

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①導入前の準備

1)会社として「メンタルヘルス不調の未然防止のためにストレスチェック制度を実施する」旨の方針を示しましょう

2)事業所の衛生委員会で、ストレスチェック制度の実施方法などを話し合いましょう

3)話し合って決まったことを社内規定として明文化し、全ての労働者にその内容を知らせましょう。

4)実施体制・役割分担を決めましょう

②ストレスチェックの実施

1)質問票を労働者に配布し、記入してもらいましょう

2)記入が終わった質問票は、医師などの実施者(またはその補助をする実施実務従事者)が回収しましょう
※注意※
第三者や人事権を持つ職員が、記入・入力の終わった質問票の内容を閲覧してはいけません。

3)回収した質問をもとに、医師などの実施者がストレスの程度を評価し、高ストレスで医師の面接指導は必要な者を選びます

4)結果(ストレスの程度評価、高ストレスか否か、医師の面接指導が必要か否か)は、実施者から直接本人に通知されます。
※注意※
結果は企業には返ってきません。結果を入手するには、結果の通知後、本人の同意が必要です

5)結果は、医師などの実施者(またはその補助をする実施実務従事者)が保存します

③面接指導の実施と就業上の措置

1)ストレスチェック結果で「医師による面接指導が必要」とされた労働者から申出があった場合は、医師に依頼して面接指導しましょう

2)面接指導を実施した医師から、就業上の措置の必要性の有無とその内容について、意見を聴き、それを踏まえて労働時間の短縮など必要な措置を実施しましょう

3)面接指導の結果は、事業所で5年間保存しましょう

④職場分析と職場環境の改善(努力義務)

1)ストレスチェックの実施者に、ストレスチェック結果を一定規模の集団(部、課、グループなど)ごとに集計・分析してもらい、その結果を提供してもらいましょう
※注意※
集団規模が10人未満の場合は、個人特定されるおそれがあるので、全員の同意がない限り、結果の提供を受けてはいけません。原則10人以上の集団を集計の対象としましょう。

2)集計・分析結果を踏まえて、職場環境の改善を行いましょう

 

職員のストレスマネジメントは経営の重要課題!

罰則がないとはいえ、企業において労働者のメンタルヘルス不調は企業イメージのダウンや離職率、人材確保の低調に多大な影響を与えます。ストレスチェックの実施にあたっては「他の企業の様子を見る」と考えている事業者も多いようです。

しかし、労災申請数が最も多い介護業界は、一刻も早くメンタルヘルス対策と労働環境の改善が求められています。労働者にとって、そして利用者から信頼される企業になるためにもストレスチェックに関して今一度考えてみてはいかがでしょうか?

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