介護施設で発生する虐待の実情とは!?【平成26年度調査結果】

介護施設で発生する虐待の実情とは!?

厚生労働省は、平成26年度の高齢者虐待の対応状況等を把握するために調査を行いました。今回は、現在問題となっている養介護施設従事者等による高齢者虐待に焦点を置き、虐待の発生状況・発生原因、また防止対応のための体制整備についての調査結果を分かりやすくまとめます!

参考元:「平成26年度 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果」(厚生労働省)

 

1.【虐待の発生状況に迫る】~市町村における対応状況等~

調査対象は全国1,741市町村(特別区を含む)及び47都道府県における、平成26年度中に新たに相談・通報があった事例、及び平成25年度に相談・通報があり、平成26年度において事実確認や対応を行った事例。まずは、虐待の発生状況の調査結果を見てみましょう。

1-1.相談・通報対応件数

平成26年度に受け付けた、養介護施設従事者等による高齢者虐待に関す相談・通報件数は、1,120件でした。平成25年度は962件。158件(16.4%)増加しました。
平成21年度以降、相談・通報件数は年々増加し、約3倍になりました。そして虐待と判断された件数は、ここ3年で2倍に急増しているという驚くべき結果に。

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また、通報件数が特に多かった都道府県はこちら。

大阪府 127件
兵庫県 90件
東京都 82件
北海道 82件
神奈川県 63件

1-2.相談・通報者

相談・通報者は1,308人。「当該施設職員」による相談・通報が24.0%(314人)と最も多く、次いで「家族・親族」が18.9%(247人)、「当該施設管理者等」が11.9%、当該施設元職員が11.3%、また「本人による届出」が2.1%という結果でした。

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多くの相談・通報が行われていますが、実際に「虐待」と認められた件数はどのくらいでしょう?

1-3.事実確認の状況

相談・通報を受け、平成26年度に事実確認調査を行った事例は1.039件ありました。そのうち、虐待の事実が認められた事例は294件(約25%)。 一方、132件は、相談・通報を受理した段階で明らかに「虐待ではなく、調査不要」と判断され、事実確認調査が行われませんでした。

1-4.過去の指導等の有無

虐待があった施設・事業所のうち、約4分の1が、過去に何らかの指導等を受けていたことが明らかに。
指導の多くは、苦情対応や事故報告という、サービス提供に関する指導でしたが、過去にも虐待事例が発生していたケースが4件ありました。

1-5.都道府県への報告

養介護施設従事者による高齢者虐待に関して、高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律第22条及び同法施行規則第1条に規定により、下記が課せられています。

「通報又は届出を受けた市町村は、当該通報又は届出に係る事実確認を行った結果、養介護施設従事者等による高齢者虐待の事実が認められた場合、または更に都道府県と共同して事実の確認を行う必要が生じた場合に、当該養介護施設等の所在地の都道府県へ報告しなければならない」

この規定に応じ、虐待の事実確認を行った事例1,039件のうち、307件は市町村から都道府県へ報告がありました。

 

2.【虐待の発生状況に迫る】~都道府県における対応状況等~

市町村から都道府県へ、報告があった事例は307件。そのうちの13件は「都道府県と共同して事実の確認を行う必要がある」とされ、さらに3件が「都道府県と共同して事実の確認を行う必要がある事例」と判断されました。

 

3.虐待の事実が認められた事例に迫る

3-1.虐待の事実が認められた事例の件数

平成26年度に虐待の事実が認められた事例は、前年度より約36%増加し、全体として300件という結果に。どのような場所で、誰によって虐待は起こってしまうのでしょう?事例を元に考えてみます。

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3-2.虐待の内容

虐待の種別として約6割を占めたのが、「身体的虐待」(63.8%)。そのほかは「心理的虐待」が43.1%、「経済的虐待」が16.9%、「介護等放棄」が8.5%という結果でした。

3-3.被虐待高齢者の状況

虐待を受けた高齢者の状況はどのようなものでしょう?

性別は「男性」が約30%、女性が70%と、女性が圧倒的に多い結果。
年齢は「85~89歳」が21.9%と最も多く、「80~84歳」(18.6%)が2番目とでした。

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注目すべき点が「身体状況」。「要介護5」は29.2%と最も多く、次いで「要介護4」が29.0%、「要介護3」が22.3%。結果を見ると「要介護3以上」の高齢者が約8割を占めていることが明らかになりました。
また、「認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ以上」の者は77.3%、そして「要介護認定者のうち障害高齢者の日常生活自立度(寝たきりA以上)」は95.3%でした。

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 3-4.虐待者の状況

虐待を行った当事者はどのような状況にあるのでしょう。

性別は「男性」が59.3%>「女性」が40.7%
年齢は最も多いのが「30歳未満」(22.0%)。
次いで「40~49歳」「30~39歳」がそれぞれ19.2%、「50~59歳」が12.5%という結果でした。
比較的に若い従事者によって行われてしまっていることが予想されます。

職種は「介護者」が約80%を占めています。
詳細はこちら。

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 3-5.虐待の発生要因

年々増加している虐待問題ですが、そもそもの理由は何でしょうか?虐待の発生要因の調査結果はこのようになっています。

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約6割を占めたのが「教育・知識・介護技術等に関する問題」(62.6%)。職場において実務に関する研修等が不足していることが見受けられます。

 

虐待の起こらない職場作りを

今回は、養介護施設従事者による高齢者虐待に関する情報をまとめました。このような虐待を少しでも減らすためには、職場環境を向上させる定期的な研修の実施や、従事者のメンタルヘルスケアなどの改善策を企てていくことが求められています。

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